「デザイナーもJavaScript覚えるべきだよ」について
ブログ
2012.12.11
先日、Facebookでぼやりとつぶやいたのですが、「デザイナーもJavaScript覚えるべきだよ」ということについて、思うことを素直に書いてみます。
2012年12月8日に開催されたCSS Nite in OSAKA, Vol.34でわたしは微力ながら第二会場の進行をしていました。
この日のセッション内容については、これからのWeb系の仕事まわりでは、なんとなく各専門家はいても、WebならWeb系全般の一般教養みたいなのはおさえておかないと、実際仕事につながらないよねーみたいな雰囲気でした。
たしかにそうなんです。
でも思うのは、「デザイナーもJavaScript覚えるべきだよ」と軽々しく言うのはちょっと違うと思うのです。
もちろん覚えて自分の表現方法が広がるのに越したことはないのですが、みんながみんなそこを目指すものでもないな、と最近思っています。
これには、自分自身の葛藤がある時期もすごくあったのですが、それを経て感じたことを素直に書きます。
デザイナーに「デザイナーもJavaScript覚えるべきだよ」と言ったら
たとえば、いわゆるWebデザイナーさんに対して。
「PhotoshopやIllustratorはもちろん使えます。Webサイトのある程度の構成を考慮したデザインもできますし、HTML/CSSのコーディングもできます。でもJavaScriptはかけません」
という人がいたとします。
その人に、「デザイナーもデザインだけじゃなくてJavaScriptもできないといけないんだよ」と言ったとします。
おそらく言った人はまったくもって悪気もないでしょうし、深意もないでしょう。よかれと思って言っただけだと思います。
そのデザイナーは、そう言われたときにどう思うでしょうか。(もちろん人によると思いますが)
1. 「あ、そうなんや。よし、じゃあ勉強しようっと」
なんでも受け入れられる、いわゆる素直な人は、こう思うでしょう。
そしてこう思える人はすばらしいと思います。きっと勉強して、いろいろなことができるようになるのでしょう。
2. 「それはわかっている、わかっているけど勉強してもできないんだよ」
おそらくだれしも、一度は1.のように素直に受け入れると思います。
しかし、勉強しようとしても、どうしても「プログラム」という壁を乗り越えられない人はいると思う。
ここでずーっと止まっていると、これはコンプレックス化してしまいます。
そして、次のようなことを考えはじめます。
- わたしはやっぱりできない人なんだ。
- 2年以上もやろうと思っているのに、できないもん。
- JavaScriptができないとクリエイターとしてダメなんだ。
- JavaScriptができる人のほうがセミナーとか出ていろいろしゃべっているし、評価も上だし、偉いんだ。
わたしもそうでした。しばしコンプレックスになって悩んでいました。ふさぎこんでいました。
でも、そのように考えることは、間違いです。間違いです。大事なことなので2回言いました。
このことについては後述します。
3.「え、なんでそれをできないといけないの?」
はなから新しい技術を受け入れようとしない人は、ちょっともったいないなと思います。
IT技術はおそろしく早く進んでいるので、受け入れないことを続けているとそのうち陸の孤島となってしまいます。
2.のようにコンプレックスになって、半ノイローゼ状態になっていると、こういうふうに「なんでできなあかんの?別になくてもいいやん」と思ってしまいがち。
でも、そういうふうに思い始めたら危険信号。
自分からシャットダウンしてしまうと、だれがなにをいっても聞けなくなり、わたしいいもーんみたいなすねた感じになり、残念な人生になってしまいそう。
なのでここは、ちょっとしんどいときもあるかもしれませんが、ぐっと我慢して、「興味を持って、一般教養レベルの知識を身に付ける」ことはがんばりましょう。
でも、そう思ってしまいそうになったらどうしたらよいのか。
技術の進歩が速すぎて病みがちな人は、少しリラックスして自分の居所を探しましょう。
何か自信を持てる分野を探しましょう。
2.についてブレイクダウン
さてここで、2.で「それはわかっている、わかっているけど勉強してもできないんだよ」とコンプレックス化してしまったときのことを考えてみましょう。
精神論的なところもあるので言語化するのはむずかしいのですが、自分の意見をきちんと言葉として表現したいのです。
たしかに、デザインもできてJavaScriptもできる人のほうが、「何ができるか」ということが経験としてわかっているので、クライアントに対して提案もしやすいし、チーム内でも話がしやすいのはあると思います。
ただ、それをむやみにデザイナーに強要してしまうのは、考えもの。
必要以上に強要すると、その人の精神バランスをくずしかねません。
コードがかける人が偉い?
「コードがかける人が偉い」というのは今のWeb業界ではなぜか暗黙の了解としてあるような気がしています。
でも、それは暗黙のうちに「デザイナーは別に偉くないんだよ」ということを暗に言っているような気がしてなりません。(というかそう思ってしまう時期があった)
「だって、見るのはWebブラウザなんだから、それに実装できる人がいないと見れないじゃないか」と言われたらそれまでですが、「だったらデザイナーがいなかったら葬式UIでいいんかい!」という、鶏が先か卵が先かというか、それ以前に子供のけんか。
でもね、デザイナーだって、別にやりたくないからやってないわけではなく、やりたくてもできない人もいるわけですよ。
勉強してすっとできたらだれも苦労しません。できないから悩んでいるのに、それをつつくようなことを言われると、ついムキーッと感情的になってしまうのですよ。
たぶんそういうデザイナーさんいっぱいいると思う。
なんだか「コードかけないの?」みたいなたわいもない質問に自信を喪失してふさぎこんでしまって、そしてせっかくすごいデザイナーなのに自分を失ってしまっている人もいるんじゃないかな、と。
でもね、それは間違いです。
もっと自信を持ってほしいです。
デザイナーには、コードがかける人にはないような知識を持った人がたくさんいますよ。
「デザイナーもコードがかけないといけない」という業界にはしたくないのです。
まあ、思いっきり主観ですが。
という経験をしてからの、デザイナーズハックと開き直り
わたしもそうだったのですが、コンプレックスはひとつ持っていると、なぜか全部の分野で思うようにいかない…と思うようになってしまいがちです。
コードがかけないとなると、じゃあかけなくてもいいやん!と思うようになりました。(開き直り)
でもこの開き直りが重要で、ここをあきらめて開き直ることができないから、ずっとひきずってしまうのですよ。
そこで、コードがかけないなりに一般教養を増やして、Webまわりだけでなく、どんなデバイスでも対応できるデザイナーになってやれ!と思ったわけです。
IT業界、Webだけではありません。
アプリになると考え方もぜんぜん変わってくるし、もっというとハード系のデザインとかも手を出そうと思えばなんでもできるのです。
一般教養
クリエイティブな職業である以上、新しい技術などが出てきたら、「それで何ができるのか」というのは一般教養として知っておいた方がいいと思います。というか、これについては「知っておくべき」とまで言ってもいいのかなと思っています。(個人的には○○べきというのはあまり使いたくないのですが)
自分の手で実装できるかどうかについて
ただ、それを自分の手で実装できないといけないかについては、「否」だと考えています。
今までの経験上、漠然と「JavaScript勉強しないとなぁ〜」と思っていても、ぜったいに習得できなかったです。
「勉強しないとなぁ〜」とか「できるようにならないとなぁ〜」みたいな漠然とした目標は、クリエイティブな技術においてはまったくできた試しがない。
逆に、「できるかどうかわからないけどこういうことやりたいんだ、これってJavaScriptを使ったらできるかな?」ということにおいては、だいたい実現できました。
AndroidアプリのXML実装もできたし、AndroidアプリのJAVAを使ったかんたんなアプリも、やろうと思ったらできた。
JavaScriptを使ったブラウザ上での動きも、やろうと思ったらできた。
たぶん、それでいいと思います。
ムリにやらなくてもいい。やるべきときがきたらできるのです。
ハード系のデザインについて
今までハード系にはまったく縁もなく、人脈もなかったのですが、「やりたい!」ということでいろいろコトは進んでいきます。
ここでのモチベーションは、「楽しそうという未知の領域」と「まだあまりデザイナーが多く着目していない」という点。
社内勉強会ではArduinoを少しずつおしえてもらっています。
ソフト開発とは違うハードのプログラミングも、おもしろいです。いろいろ勉強になる。
そしてデザイナーズハック
そもそもは、Webサイトやアプリなど、実装しなくても体験をデザインしたり、デザインモックを作り上げたりすることを目標にしていましたが、最近はWebサイトやアプリなどだけでなく、ハード系のものとかも取り入れながらなにか考えられないかなーと模索中。
まとめ
「やりたいと思うことがあれば、そのときに精一杯やる」程度でいいと思います。
そして、みんながみんなデザインもコードも書けるようにならなくていいと思います。
もちろん必要であれば、少し勉強したらいいと思います。
楽しくできそうであれば、続けたらいいと思います。
楽しくないのに負い目を感じてムリにしようとしなくていいと思います。
デザイナーにはもっと大事なデザイナーの仕事があるのです。
コードとにらめっこをするよりももっと人間のことを考えないといけないこともあるのです。
これが今の強い気持ち
もしいろいろな状況で病んでしまったら、なにがえらいとか、今後はなにが儲かるからとか、いっさい計算せずに自分の楽しいことを突き進めていけば、いいと思います。
わたしが先日のそのCSS Nite in OSAKA, Vol.34でいちばん思ったのは実は、「これから業界で生き残るためにはいろんなスキルが必要だよ」ということではなく、「『人の心』があるものは必ずなにかしらにつながり、共感される」ということ。
そして自分もそういう活動をしたいと思うし、そういう人たちを応援したいと思います。
【追記】(2012.12.13)
こんなに反響があるとは思っておらずビックリしているのと、ちょっとうまく伝えきれていなかったと反省しています。
「一般教養」という言葉で片付けてしまって、言葉足らずだったところを追記させてください。
「コードがかけて自分で実装できる」ことではなく、「コードで表現が可能なことを知っておく」ことが重要だと思っています。
そのための勉強はしていかないといけないので、それがわかるためにコードを覚えないといけないのであればやらないといけないし、概念だけで理解できるものならコードは覚えなくてもいいと。
概念だけで理解できるのかというところでは、コードで表現することを、コードがわからない人にもわかるように噛み砕けるのであれば可能でしょう。
(そうでなければガッツリ勉強しないといけないですが)
そして、概念を知ってエンジニアとうまく協業できるような話をできるようになることで、いろいろなワークフローが改善されることを願っています。